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過度の安静による不活発状態は、原因疾患の有無にかかわらず、佩用症候群、低運動性疾患、運動不足病などと言った病的な状態を招きます。
「佩用」すなわち、使わないと言うことは肉体にも精神にも、あらゆる面で様々な悪影響を及ぼします。
これらを総称して「佩用症候群」と呼びます。
その主な症状は、それぞれ無関係の様な、きわめて多種類の症状ですが、基本的には「安静」と言う共通点で結ばれていて、一部の症状が顕著である場合でも、必ず他の症状が同時に平行して進行していると考える必要があります。
特に、老人や運動障害のある場合には、特に安静の影響を受けやすく、例えば、この様な人が、風邪で寝込んだり、転倒による障害で、数日間、安静に寝込んだだけで、次々に佩用症候群の症状で悪循環を繰り返し、寝たきり状態に陥ってしまうと言うことも決して少なくありません。
【佩用症候群の症状・説明】
◆筋萎縮
筋肉は使って鍛えれば強く太くなり(用性肥大)、使わないと弱く短くなると言うのは一般常識になっています。
しかし、安静によって筋肉が委縮すること(廃用委縮)がいかに重いものであるかと言うことは意外に知られていません。
例えば、臥床安静一週間で筋力の30%が失われ、その後も一週間ごとにほぼ30%ずつ低下します。
これは筋力を使う最大の運動を毎日行っても、一週間の筋力の増強が10%前後であることを考えると、きわめて重要です。
このようにして低下した筋力や耐久性を訓練によって回復させるには、普通安静期間の3倍前後の期間が必要であり、年齢も大きく関連して、若い人は回復も早く、老人になるほど遅くなります。
場合によっては、完全な回復が望めないことも少なくありません。
更に運動麻痺の場合、麻痺した筋肉におこるだけではなく、全体的な活動量の低下によって、麻痺の無い健常な筋肉にも廃用委縮がおこります。
しかし、実際は運動障害が生じた場合、健常な方の手足は障害部分をかばって、健康な時以上に動くことが要求されます。
例えば、脳卒中で片麻痺をおこした場合、健常な側の手は杖をつくための力が必要になり、足は患側の足をかばって動く力が要求されます。
◆廃用性骨委縮(骨粗鬆症)
骨の代謝が正しく維持されるには、骨本来の役割である、体重を支えたり、筋肉の力を受けて他に伝えるといった機械的な刺激が必要です。
例えば、脳卒中の片麻痺では、麻痺側の骨には著しい骨粗鬆症が見られます。
しかも、運動量が低下するため筋肉の場合と同様に健側の骨も委縮しやすくなります。
骨粗鬆症は、転倒などによっておこる骨折の原因になり、また痛みの原因になったり、骨のカルシウム分が溶け出して、尿中のカルシウム排泄が増え、尿路結石の原因にもなることがあります。
◆関節拘縮
関節を動かさないでいると、関節が固まって動きにくくなり、曲がったままになったり、逆に伸びたまま、曲がらなくなることがあります。
結合組織は、正常時には絶えず外から力が加えられ、引っ張られて伸びたり、自分の力で縮んだを繰り返して、弾力性や柔軟性を保っています。
ところが、縮んで外からまったく引っ張られない状態が長く続くと、結合組織の弾力性が失われ、かなり強い力で引っ張っても伸びなくなってしまいます。
例えば脳卒中で麻痺があれば、必然的に関節拘縮になるのではなく、自分では動かせなくても、他人が動かしてくれさえすれば、結合組織は弾力性を失わなくてすみ、拘縮を予防できるわけです。
逆に、ある程度動かせても、その運動が十分でなければ、拘縮がおこることもあるわけです。
早期から関節可動域訓練を行った場合は、殆どの例で予防でき、放置した場合とでは大きな差が生じます。
◆褥瘡(床ずれ)
褥瘡(床ずれ)の最大の発生原因は、皮膚に対して持続的に圧迫が加わることです。注意したいのは、圧迫力は垂直方向だけでなく、体位変換や移動時の皮膚面と水平にかかる引きずりの力(剪断力)も同様に関与することです。
褥瘡を作りやすいその他の原因としては、麻痺、感覚障害、汗や尿による皮膚の汚染と湿潤、皮膚の感染症、打撲、裂傷、皮下組織の減少や筋肉の委縮による骨の突出、心不全、糖尿病、全身性動脈硬化症などの合併によって末梢循環障害を生じやすい状態、貧血や低蛋白血症などの栄養不良状態などがあります。
尚、シーツや衣服のシワ、固い縫い目、ボタン、バックルなどの圧迫も原因になります。
◆起立性低血圧
急に立ち上がった時に、めまいや立ちくらみをおこすことがあります。
寝ている時は、血圧は普通に保たれていますが、立ち上がると血液は腹部や足の方に行ってしまい、頭の方に行く血液が不足して血圧が下がり、脳貧血の状態になるものです。
これは姿勢の変化に対応する血圧調整の異常(起立性調節障害)によります。
通常は、立つと同時に自律神経の働きで、下肢や下腹部の血管を収縮させて、血液が下方に向かいにくくし、脳には血液が十分流れるように血圧調整機構が働いているのです。
しかし、長期間寝たままの安静状態を保ち、座ることもしないでいると、この血圧調整機構が鈍くなり、立ち上がってとしても急には対応できず、その結果、起立性低血圧をおこします。
老人の場合、一ヶ月以上、臥床安静状態を続けると、起立性低血圧が必ずおこると言われています。
起立性低血圧を防ぐ対策として、立つことができない場合でも、なるべく早期から、座位をとらせる必要性があります。
◆精神的合併症
身体的活動の制限と共に、入院などによって自由が束縛され、社会生活が正常に営まれなくなり、積極性を失い、抑うつ的になったり、依存的、攻撃的、逃避的な態度を示すという人格の変化や行動の障害が現れることがあります。
例えば、脳卒中の場合は急激な発症による変化も大きいため、精神的反応が極めておこりやすくなります。
また初期の記憶障害による記憶の不確実さや、一ヶ月以上も続く軽い意識障害のため、精神的混乱は更に悪化しやすくなります。
◆括約筋障害(便秘・用便失禁)
自分でトイレに行くことができないか,もしくは許可されていない状態。また必要な時に、差し込み便器や尿器が与えられないでいると、痴呆でない人でも失禁状態になってしまう可能性があります。
更に、活動性が低下した状態が続くと、食欲不振と共に、腸管の運動が低下して便秘しやすくなります。
便の固まりが腸に停滞すると液体成分のみが通過するようになり、大便失禁となったり、便の固まりが尿道を圧迫して尿閉を生じ、尿失禁の原因になることがあります。
失禁は心理的な荒廃と相まって廃用症候群の強める極めて大きい因子となります。
早めのリハビリは本当に大切です。
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